好きだから傷付ける

思い出す。その日の出来事を。
雨に濡れながら項垂れる金髪の人。
1度は素通りしたけど、やっぱり
どうしても気になって
勇気を出して声をかけた。

雅來「自宅謹慎がとけて初めて
学校へ行った時、同じクラスにいる
滝川を見つけて嬉しかったんだ。
これでやっと恩返しが出来るって。
でも、滝川は俺の事を覚えない所か
目すら合わせてくれなかった。」

美空「ごめん。...怖かったから。」

謝る私を見てふっと笑った。

雅來「分かってる、そんな事。
きっかけがないままズルズルと
時間だけが過ぎていって
何もないまま滝川とは終わるのかなって
俺も諦めてたんだ。
でも、あの日奇跡が起きた。
滝川には本当に申し訳ない事を
したと思ってる。でも、俺は
あの日あの場所にいたのが
滝川で良かったと思った。
ようやく滝川と話せるチャンスが来た。
俺は滝川だったから助けたんだ。」

知らなかった鬼藤くんの想いが
そこにはあった。
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