リライト
背後から聞こえたきた聞き慣れた悪態。思わず身体が跳ね全身で驚きを表す。勢い良く背後を振り向くと、そこには今日この日ほど絶対に会いたくなかった、絶対に会う筈がなかった人物が何やらこちらに笑顔を向け手摺に凭れて腕を組んでいた。
「な、なんで、こっ、ここは誰も来ないはず…」
上擦った声で吃りながら驚きを伝える。
そんな事はお構い無しだと更に彼は続ける。
「だって未久さんが入って行くの見えたもんですから」
軽々しくあたしに指を指して、視線を合わせるためか隣に座る。先程とは違う胸をドキドキ(というか激しい動悸)を感じるが、やはり涙は止まらない。
「…何の用よ、貴志くん。」
あたしの後輩、貴志 悠くん。
年齢はあたしより三歳下。綺麗な茶色の髪色をしていて、いつも笑顔でいて愛想も良くて上司ウケもいい。傍から見たらとても愛らしくて爽やかな青少年。
けれども慣れた人には本性を隠さず、本来はなかなかふてぶてしい態度と物怖じしない性格でかなり毒舌。
特に何故かあたしにはいつもこのように突っかかってきては毒な笑みを吐く彼をどうもあたしは好きになれなかった。
もちろん言い返しはするけれど。