リライト
苦しいのはあたしひとりだけでいい、だけれど脳裏に浮かぶのは、憧れていたあの笑顔じゃなくて照れくさそうに2人寄り添う幸せな笑顔。
あたしはただそれを引き攣った笑顔で祝福するしかなかった。
「…そんなに泣くほど好きだったんなら、なんで言わなかったんですか」
ボソッと彼は呟く。聞き見を立てている訳ではないのだけれど右隣に神経が集中する。
言おうとした、けれども言えなかった。
思わず口に出そうになるのを抑えてそれは言わないでおく。
自分が更に言い訳がましい人間だったなんて今はまだ思いたくないなかったのだ。
「バーカ。言える訳ないでしょうよ。
…まさかあのふたりが婚約するなんて夢にも思わなかったもん…」