一年後の花嫁

サロンの階段を一段飛ばしに上ると、すぐに山辺様と桃田様の姿が目に入った。
なにやら楽しげに顔を見合わせて、じゃれあっている。

「こんにちは。お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした」

「あ、藤堂さん。今日もよろしくお願いします」

にっこり微笑んだお二人は、同じ顔をしていた。

お二人だけじゃない。何千組と見てきた新郎新婦様の大半が、そうであった。
夫婦が似てくるというのは、なぜだかわからないが、たぶん本当だ。

「招待状の方は、無事発送できましたか?」

「はい。なんとか徹夜で折り込みました……」

揃ってティーカップに口をつけたお二人に、思わず口元が緩んだ。

「お疲れ様でした。では今日は、卓上装花ですね。フラワーコーディネーターを呼んでまいりますので、少しお待ちください」

そう言って席を立って、コーディネーターを呼びに行く道中にも、あちらこちらに幸せそうな新郎新婦様の姿が。

そんな姿を目の当たりにすると、忙しいだとか大変だとか、やっぱりその類の感情は、出て行けと言わずとも、自然と姿を消すのだ。

それと同時に、俺はいつも不思議に思う。
どうして彼らは、お互いが自分の相手だとわかったのか。

まるで当たり前のように、二人で一つになった彼らの姿が、不思議でならなかった。

< 3 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop