一年後の花嫁
「うわ~久しぶりに中入った!やっぱ綺麗だね~」
「今日は特別な。人いないし」
そう、人がいないのをいいことに、俺は長妻を、本番と同じチャペルに連れ出した。
ガラス張りのチャペルには、庭園の緑を介して日差しが降り注ぐ。
それが反射しているのか、それとも本当に喜んでくれているのか、彼女の瞳は、先ほどまでよりもずっと綺麗に輝いていた。
そんな彼女が、あまりに可愛くて。
「ん」
「……え!?」
つい、昔の俺がうずいた。
彼女の右側に立って、腕を組むよう目で訴えかける。
そんな俺の姿に、案の定彼女は、二歩も三歩も後退りした。
「予行練習って言ったじゃん」
「や、そうだけど……えー……いいの?」
もじもじしながらも、次第に彼女との距離が縮まる。
……自分で言っておいて、急に緊張してきたことは、彼女に悟られないようにしなければ。
「藤堂くんって、みんなにこんなことするの?もう、ほんと昔からそういうとこ……」
ぶつぶつ言いながらも、彼女の右手が、俺の左腕を随分と控え目に掴む。
「はいはい。歩くよ」
情けないほど、俺の心臓はうるさく高鳴っていた。
どうにもこの心臓は、今も昔も彼女にだけは弱いらしい。
「なんか、変なの」
「なにがだよ」
「だって藤堂くんとこんな」
「練習だって言ってんだろ」
確かではないけれど。
きっと彼女も、少なからず緊張していたような気がする。
バージンロードを歩いているというのに、俺たちはあまりに口数が多かった。