一年後の花嫁
「なに笑ってんだよ」
「……相変わらず最低~と思って」
「相変わらずって……」
「昔から女の子、何人もいたもんね」
長妻は誤解している。
確かにころころ彼女は変わっていたが、同時進行は……たぶんなかったはずだ。
「誤解だよ」
「えー?じゃああの人は?彼女?」
彼女だと答えても、彼女じゃないと答えても、どちらも正解じゃないだろうな。
「……一応、彼女」
せめて嘘をつくのはやめようと、俺は正直に白状した。
「そ。綺麗な人ね」
さっきまで、ついさっきまで。
俺の腕の中にすっぽり収まっていたくせに。
突き放すような言い方が、引っかかった。
「俺は、もっと色白で小っちゃい子の方が好みだけどな」
「もーほんとに最低。彼女だって色白だったじゃない」
千尋に遭遇してから、一度も合わない目線。
「長妻の方が色白じゃん」
「なっ……!」
「長妻の方が、背も小さい」
「……ほんっとチャラい!!」
また猫が繰り出すパンチみたいな、痛くも痒くもないそれで殴られると、ようやく彼女と目が合った。
「もうあの子とは、終わりにしようって思ってるから」
まるで、付き合い始めた彼女に言い訳してるみたいだ。
我ながら、自分が情けない。
「あたしには関係ないし」
そんな可愛くない長妻が、あの頃みたいで。
「そうですか」なんて言ったものの、俺の顔には笑みが浮かんでいた。