一年後の花嫁
夢みたいな時間だった。
藤堂くんは、何度も何度も私を好きだと言って、強く強く抱き締めてくれた。
こんな藤堂くんは、初めて知ったけれど。
それは彼の沼に落ちるのに、十分すぎるギャップだった。
ばかみたいに、私もそれにつられてずっと彼にくっついて。
何度も何度も好きだと繰り返した。
「帰したくない」
帰り際、後ろから彼の温もりに包まれて最後の一回。
気付いたら涙が溢れていた。
「ずっと一緒にいたいよ」
言ったって困らせるだけなのに。
案の定、藤堂くんは困ったように笑って、そのあとすぐに「一緒にいるよ」なんて甘い言葉を吐いた。
こんなの、あの頃の私に話したら、腰を抜かしそうだな。
まさか自分が。
藤堂くんと。
「なに笑ってんだよ」
「なんでもないよ」
この時間が、ずっとずっと続いてくれたらいいのに。
……そうじゃない。
叶えたいなら、私が変わるしかないんだ。
「藤堂くん、彼女いるんだよね」
「もう別れたよ。長妻のせいだな」
「は!?」
隣に寝転がる彼が、優しい目で私を見つめた。
「長妻しか好きじゃねーから」
「……ばか」
ついくせで暴言を吐いてしまったのに、彼はぎゅっと私を抱き締める。
いつもは暴言に暴言で返すくせに。
「……長妻は?」
耳元で聞こえる、藤堂くんの甘い声。
もう溶けてしまいそう。
「好き……だから」
―― 私が、変えるしかない。
藤堂くんの隣にいたいから。
全部失っても、彼が欲しい。
今度こそ。
「少しだけ、待っててほしい」