一年後の花嫁
長妻は、まるであの頃の学級委員みたいな強い目をして、俺に訴えた。
このコロコロ変わる表情が、すごく好きだ。
一時も目を離したくないと思う。
「……十三年だぜ。もう余裕で待てるわ」
俺が笑うと、ほっとしたように目を細めて、彼女も笑った。
「ありがと」
“少し”が、どれくらいの期間かなんてわからない。
だけど、約束があるだけ昔より全然マシだ。
十年でも二十年でも、馬鹿みたいに俺はずっと待っているだろう。
また長妻に縛られることになるけど、それも悪くない。
昔とは違うから。
長妻も、俺を好きだと言ってくれたから。
「好きだよ」
「もう、わかったって。藤堂くんって女の子にはそんなキャラなの?」
恥ずかしそうに枕に顔を埋めた彼女が、どうしようもなく愛おしい。
「長妻にだけだよ」
本当に。
本当に、長妻にだけだ。
俺が女の子に暴言を吐くのも、抑えが利かない感情を抱くのも、周りが見えなくなるのも。
長妻にだけなんだ。
彼女の泊まるホテルまで車で送ると、最後にもう一度キスをして。
「……じゃあ、また明日」
彼女は、心なしか名残惜しそうに、助手席を降りた。