神谷ナツカの虚空

次の授業は化学だった。水酸化ナトリウムと塩酸がなんたらとかわけわからん。あとで川口からきいておこう。とおもったその時、

ガンっ

気づいたときには俺の顔は天に向けられていた。ナツカは俺の髪をむしりとるようにつかみ、俺の顔を自らに向けて引っ張ったのだ。俺は髪がまるごとちぎれるかと思ったので、すぐにその掴んでいる手を離し、こう言った。
「なあ、顔が取れるところだったぞ！危な…」
「ねぇ、シン、思いついたわ！新しい部活を作ればいいんじゃない！」
余りの勢いの良さに俺は動揺した。そして、クラスメートたちは被害者の俺をまるで共犯者と思ったかのように俺を見つめていた。なので、おれは修正しようとして、手をやれやれ、というかのように彼らに向けた。それでも神谷はやったぜ、というかのように仁王立ちしていた。
案の定、先生は
「お前ら、席に座れ。」
と言い放ち、俺はなんともいえないような、この微妙な空気をつくり、授業が再開した。