神谷ナツカの虚空
神谷と長谷川さんが居なくなったあと、剣持が俺に話しかけてきた。
「…本読んだ？」
「いや、まだだけど返した方がいいか？」
「いいえ。」
それにしてもこいつは喋っても原稿用紙一行にも満たないな…。
俺は家に帰るとすぐにその本を読み始めた。
「シンくん、何読んでるの？」
俺の可愛い妹が聞いてきた。でも理解しようのないことしかこの本には書いていなかったのだ。だからとりあえず誤魔化すことにした。
「チャート式高校数学だよ。お前も読むか？」
と言って俺は妹に本を差し出した。すると、彼女は本をペラペラめくり始めた。その間、俺が暇を持て余していると、妹があることに気づいた。
「ねえねえシンくん、なんか、紙がはさまってる！」
それは栞だった。おそらく剣持のものだろう、と思いそれを戻そうとしたとき、栞の裏に何かが書かれていることに気づいた。そこには、

ヨ瑠クjィ　匕賀シ爻艶

とあった。俺はそれを見た途端にそれが何を指し示しているのか気づき、自転車で“東公園”に向かった。信号のない道を通り、できる限りの速さで。
< 20 / 65 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop