神谷ナツカの虚空
第三章 明
まだ彼女の話は続いた。
「神谷ナツカは自律進化の可能性を秘めている。恐らく彼女には自分の都合の良いように周辺の環境情報を操作する力がある。その訳は先ほど言語化した通り、まだよく分かっていない。それ私がここにいる理由。」
おいおい、全くと言っていいほど喋らなかった輩が、いきなりとんでもない言葉を使ってしゃべりだしたぞ…。こんなことってあるのだろうか?しかもオカルトチックなことも言ってやがる…。
「ちょっと待て。正直に言おう。俺はお前の言ってる意味が全く分からない。」
すると、彼女はまた元に戻ったかのように、
「信じて。」
と端的に。
「信じるも何も、根拠がないじゃないか!れっきとした根拠が!」
「あなたは神谷ナツカに選ばれた。その個体は意識的にしろ無意識的にしろ、自分の意思を絶対的な情報として環境に影響を及ぼしている。あなたが選ばれたのには必ず何かしらの理由がある。」
「んんっ、無い!」
「ある。あなたと神谷ナツカが、全ての可能性を握っている。あなた達には世界を変えてしまう力がある。」
嘘だろ…。
「情報統合思念体の意識は、神谷ナツカが自分の存在価値と能力を自覚してしまうと巨莫な危険を生む可能性があると認識している。今はまだ様子を見るべきだ。」
「じゃあ、俺が神谷にこの事を伝えるかもしれないのに、何故俺に教えたんだ?」
「神谷ナツカはあなたが発言したことによって得た情報を重視したりしない。」
…確かに!!!
「情報統合思念体が地球に置いているヒューマノイドインターフェイスは私だけではない。情報統合思念体の意識の一部は積極的の動きを起こして情報の変動を観測しようとしている。あなたは神谷ナツカにとっての鍵。危機が迫るとしたらまず、あなた。理由が解らないかもしれない。でも、確信はある。信じて。」
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