神谷ナツカの虚空
次の日、俺が学校に着くとなんとも珍しく既に神谷がいた。そこには熊谷さんもいた。
「大丈夫?保健室、連れて行ってあげようか?」
相変わらず、優しそうな雰囲気だ。こんな女子がクラスにいるのに俺は何を…。
「おい、なんで昨日は部活に来なかったんだ?反省会、するんじゃなかったのか?」
「反省会なら一人でやってたわよ!私は学校が終わってすぐ昨日のルートをもっかい一から回ってたの!なんでこんなに蒸し暑いのに夏服じゃないの?」
はあはあ、暑さに参っているんだな。
「いい加減、何か起きないのかしら?」
すると熊谷さんが俺に顔を近づけ、こう言った。
「神谷さん、恋煩いでもしてるのかしらね?」
「いやそうじゃないだろう。」
そりゃあナツカが恋心を抱いたり、ナツカが望むような事件が簡単に起きることがあってはならないだろう。でも、後に言ったことは今着々と進んでいたなんてまだ俺は知らなかった。

その日、学校の下駄箱には砂場の上で書いたような字で、『放課後、教室に来て。』と書かれていた。前にも似たようなことがあったが、剱持の字では明らかに無い。長谷川さんの可能性も無い。彼女は元書道部員だし、ありえない。神谷と小泉は性格からして違う方法を取るだろう。網本たちの陰謀だろうか、嘘告とか。そんなことを考えながら、部室へ向かった。今日もナツカがおらず、暇だったので、またリバースを長谷川さんとした。部室に夕方になるまでいたが、誰も俺に話しかけてこなかったので、俺は教室に向かった。すると、そこには何とも意外な人物がいた。
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