神谷ナツカの虚空
「やあ、シンくん、こんにちは。」
熊谷彩月だ。
「どうも、熊谷さん、ここまで僕を呼び出して何のようですか?」
もしかしたら、『付き合って』とかか?それか、そうと見せかけたドッキリか?
「今日はあなたに私のしたいことの手伝いをしてほしいんだ。」
「それってなんですか?」
そう俺が聞いた途端、彼女は形相を変えた。そして、ポケットからナイフを取り出し、俺に光のような速さで接近し、それをつかって俺を斬りつけようとした。
「おいっ!」
俺は咄嗟に後ろに下がり、なんとか自らの身が切られるのは免れたが、俺のネクタイがほとんど切れてしまった。そして俺は教室の前側のドアに逃げ、窓に身を隠し、
「もうやめろ!変な冗談はよせ!危ないだろ!」
と叫んだ。同じ階には何故か俺と熊谷さんしかおらず、心臓の激しく打つ音が聞こえた。
「冗談?そんなものじゃないわ、だって私はあなたを殺してみたいんだもの。それに私は有機生命体のしにゆく姿を見てみたいものよ。それに、あなたが死ぬことによって神谷ナツカがどうなるのか、気になるのよ。」
と言ってさらに凶暴化して俺に襲いかかった。俺は廊下に逃げようとしたが、もう遅かった。空間が教室ではなく、何か、仕切られた場所に変化したのだ。
「ねえ、もうあきらめなよ。」
「お前は一体何者なんだよ!」
俺のもとに机と椅子が降りかかってきた。
「あなたはもうこの場所から逃げることなどできないわ。あなたが死ぬことによっておそらく神谷ナツカから大きな情報爆発が起きるわ。それは私たちが待ち望んでいたものなの。」
もうだめなのか。俺の人生は結婚すら迎えられず、終わるのか…。
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