神谷ナツカの虚空
第四章 開
翌日、担任の渡部が珍しくホームルームで話し始めた。
「みんなに伝えなきゃいけないことがある。熊谷はお父さんの急な転勤で…転校した。」
すると、クラスメートたちは驚いたり、悲しんだりしていたが、神谷は今までにないくらいうれしがっていた。
「ねえシン、これは事件だわ。いきなり転入生が来たと思えば、今度は突然の転校よ!これは何かあるに違う無いわね…!!」
そう。実際に怒っていたのだ。なんと、今日も俺の靴箱に手紙が置かれていた。それは昨日とは違い、わくわくするような内容だった。
『今日の放課後、部室に来てね。 長谷川かりん』
もしかしたら、長谷川さんを装って誰かが入れたのかもしれないが、俺はその可能性など信じたくもなかった。だから、すぐに部室に駆け込んだ。もし、仮にそうだったとしても多分剱持がいるからいいだろう。
カチャッ
「あっ…シンくん、こんにちは。」
そこには俺は見覚えのあるような、それであって知らない女性がいた。それはどこか、長谷川さんに似ていた。
「あのー、長谷川さんのお姉さんですか?」
すると、彼女はふふっ、とまるで長谷川さんのように微笑んだ。
「私はあなたの言う長谷川かりん本人です。今の私よりは年上です。」
なんてこった。彼女も本当のことを言っていたのか。今の長谷川さんから4、5年後ぐらい後かな。女は高校を卒業したら豹変するもんなぁ…。
すると、彼女はおれの気持ちを読み取ってしまったのだろう。
「シンくん、私の言ってること、信じてくれてないでしょ。ほら、」
と言いながら、彼女は服のボタンを胸のあたりまで外し、胸の谷間のあたりを指さし、こういった。
「ここにハートの形のほくろがあるでしょ?ほら。これで信じてくれたでしょ?」
やっぱり、彼女は長谷川さんじゃないのか?俺は長谷川さんのそんな部分を見たのは今までに2回ほどしかないし、しかもじっくりと見たわけじゃないから本当にそうか分からない。
「あの、長谷川さん、俺はその事、知りませんよ…?」
恐る恐る言った。
「え?でもこれを教えてくれたのは確かシンくんだった気が…。あっ!」
何かに気づいたようだ。やっぱり俺にはいってなかったんだろう!
「違うわ。今の時代のシンくんは…。ごめんなさい、私とんでもないことをしてしまいました。どうか、今言ったことを忘れてください。」
彼女は、焦りきっていた。俺はそんなにとんでもないことを聞いたのか?まあいい。
「ところで、今この空間には長谷川さんが2人いるということになるわけですよね?」
「はい、今の、この世界の時の私はおそらく今頃友達とお弁当を食べているでしょう。もちろん、あってしまっては時間が歪んでしまうので。あと、剱持さんには席を外してもらいました。」
「長谷川さんは剱持がどういう存在か知ってるんですか?」
「ごめんなさい…それは言ってはいけないのです。」
「こういうこと言うのも、久しぶりですね。」
「俺はつい先日聞いたばかりですけどね。」
そう言うと、彼女は「あっ」と言い、自分で自分の頭をグーでコツっと殴った。
「すみません、私がこの時代に長くいると余計なことを言いかねません。なので、もうそろそろおいとまします。」
うっ、こんなにも幸せな時間がこんなにもすぐ終わってしまうなんて、なんであんなことを…!!
「でも、シンくん、あなたは白雪姫という話を知っていますか?」
もちろん、小人が美人な女性を助ける、みたいな。
「ええ、知ってますよ。」
「なら、あなたがもし、というかあなたはこれからかならずピンチになる時がきます。その時、白雪姫という言葉を思い出してください。詳しいことは言えませんが、必ずその時は一緒に神谷さんもいるはずです。」
「最後にもう一つだけ。」
そう言って彼女は俺の胸にそっと寄り添った。俺は自らの頬が熱くなるのを感じた。だが、それは一瞬にして冷めた。
「私とはあまり仲良くしないで。」
そう言って去っていった。俺はその後味を余らせるしか術がなかった。
「みんなに伝えなきゃいけないことがある。熊谷はお父さんの急な転勤で…転校した。」
すると、クラスメートたちは驚いたり、悲しんだりしていたが、神谷は今までにないくらいうれしがっていた。
「ねえシン、これは事件だわ。いきなり転入生が来たと思えば、今度は突然の転校よ!これは何かあるに違う無いわね…!!」
そう。実際に怒っていたのだ。なんと、今日も俺の靴箱に手紙が置かれていた。それは昨日とは違い、わくわくするような内容だった。
『今日の放課後、部室に来てね。 長谷川かりん』
もしかしたら、長谷川さんを装って誰かが入れたのかもしれないが、俺はその可能性など信じたくもなかった。だから、すぐに部室に駆け込んだ。もし、仮にそうだったとしても多分剱持がいるからいいだろう。
カチャッ
「あっ…シンくん、こんにちは。」
そこには俺は見覚えのあるような、それであって知らない女性がいた。それはどこか、長谷川さんに似ていた。
「あのー、長谷川さんのお姉さんですか?」
すると、彼女はふふっ、とまるで長谷川さんのように微笑んだ。
「私はあなたの言う長谷川かりん本人です。今の私よりは年上です。」
なんてこった。彼女も本当のことを言っていたのか。今の長谷川さんから4、5年後ぐらい後かな。女は高校を卒業したら豹変するもんなぁ…。
すると、彼女はおれの気持ちを読み取ってしまったのだろう。
「シンくん、私の言ってること、信じてくれてないでしょ。ほら、」
と言いながら、彼女は服のボタンを胸のあたりまで外し、胸の谷間のあたりを指さし、こういった。
「ここにハートの形のほくろがあるでしょ?ほら。これで信じてくれたでしょ?」
やっぱり、彼女は長谷川さんじゃないのか?俺は長谷川さんのそんな部分を見たのは今までに2回ほどしかないし、しかもじっくりと見たわけじゃないから本当にそうか分からない。
「あの、長谷川さん、俺はその事、知りませんよ…?」
恐る恐る言った。
「え?でもこれを教えてくれたのは確かシンくんだった気が…。あっ!」
何かに気づいたようだ。やっぱり俺にはいってなかったんだろう!
「違うわ。今の時代のシンくんは…。ごめんなさい、私とんでもないことをしてしまいました。どうか、今言ったことを忘れてください。」
彼女は、焦りきっていた。俺はそんなにとんでもないことを聞いたのか?まあいい。
「ところで、今この空間には長谷川さんが2人いるということになるわけですよね?」
「はい、今の、この世界の時の私はおそらく今頃友達とお弁当を食べているでしょう。もちろん、あってしまっては時間が歪んでしまうので。あと、剱持さんには席を外してもらいました。」
「長谷川さんは剱持がどういう存在か知ってるんですか?」
「ごめんなさい…それは言ってはいけないのです。」
「こういうこと言うのも、久しぶりですね。」
「俺はつい先日聞いたばかりですけどね。」
そう言うと、彼女は「あっ」と言い、自分で自分の頭をグーでコツっと殴った。
「すみません、私がこの時代に長くいると余計なことを言いかねません。なので、もうそろそろおいとまします。」
うっ、こんなにも幸せな時間がこんなにもすぐ終わってしまうなんて、なんであんなことを…!!
「でも、シンくん、あなたは白雪姫という話を知っていますか?」
もちろん、小人が美人な女性を助ける、みたいな。
「ええ、知ってますよ。」
「なら、あなたがもし、というかあなたはこれからかならずピンチになる時がきます。その時、白雪姫という言葉を思い出してください。詳しいことは言えませんが、必ずその時は一緒に神谷さんもいるはずです。」
「最後にもう一つだけ。」
そう言って彼女は俺の胸にそっと寄り添った。俺は自らの頬が熱くなるのを感じた。だが、それは一瞬にして冷めた。
「私とはあまり仲良くしないで。」
そう言って去っていった。俺はその後味を余らせるしか術がなかった。