神谷ナツカの虚空
「じゃあ、神谷は何故自分が願った世界になっているのに、それに気づいてないんだ?」
「やはり彼女にもある程度の先入観は存在していて、宇宙人や未来人や超能力者がいてほしいと思いつつも、そんなことあり得ないと思っているのです。中学校生活は大嵐のように荒れていましたが、高校になると割と安定していました。でも、ここに来てまたトルネードを発生させました。それは恐らく、恐らくですよ、あなたのせいです。」
「なんでだよ。神谷は俺の言ってることほとんど聞いてないんだぞ!」
「確かにそうですね。ですが、あなたが変なクラブを作ることを後押ししたことは間違いありません。あなたの発言で私たちを集めるようになったのだから、責任はあなたに帰結します。」
これこそまさに濡れ衣だな。俺は何も言っていないぞ?
「まあ、それだけが理由という訳でもない訳ですが。」
と言い、彼はタクシーから降りた。ずいぶんと時間がたっているだろう。俺の来たことのない、ちょっとした都会のような場所に降りた。スクランブル交差点のある、ビル風がごうごうと響いていた。
「では、こちらへどうぞ。」
彼は横断歩道のど真ん中に立ち、そう言った。俺はしょうがないなぁ、と思いながら、そこに立った。
「では、少し目をつむって下さい。」
俺が目を閉じると手をつかんできた。そして、どこかに行くように誘導した。
「はい、もう目を開けていいですよ。」
俺が目を開けると、そこは普段生活している世界ではなかった。
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