神谷ナツカの虚空
第五章 新
「…シンくん、シンく~ん!」
俺が朝、目を覚ますと俺の腹の上に我が妹が乗っていた。俺はいつも通りそれで起き、朝ごはんを食べ、歯磨きをして学校に向かった。おれはその間ずっとこんなことを考えていた。それは、何故俺が宇宙人や未来人と交流する羽目になったか、という事だ。神谷は宇宙人や未来人に会いたい、なんて事は言っていた気がするが、いたって普通な一般男子生徒に会いたい、とは一言も言ってない。
どっ
「よお、シン。」
川口がかなりの力で俺を押した。というか叩いた。それで俺は前に躓きそうになった。が、今、質疑をする相手が目の前にいるのだ、と思い直し、俺は川口にこう言った。
「なあ、俺って割と一般的な男子高校生だよな?」
「ああ、放課後に女子生徒を押し倒すこと以外は。」
彼はいかにも嬉しそうににやけながら答えた。
「しかも俺的ビューティフルランキングA-の剱持ユイと!」
これは参ったな。さっさとその件については忘れてほしいのだが…。

今日は一時間目が体育と、とてもやる気が失せる時間割だった。その時も、朝の話は続いた。
「いいや、それにはこんなわけがあってな…。」
もう本当のことはもちろん言えないので、嘘のストーリーを作ることにした。それはこうだ。剱持が文芸部から無理やりKY隊に入れられ、どうやって退部したらいいかを俺に相談に乗って、と放課後に言い、貧血で倒れかけた彼女を俺が救った、といった感じだ。これを川口に話すと、
「いや、その話嘘っぽいな!」
あっさりばれた。
「信じたとしても、まず誰とも接点を持とうとしない剱持がお前に話しかけた時点でもうお前は普通じゃねえ!」
「剱持って有名なのか?」
「おうよ。神谷の手下という事しか知らねえけどな。」
やっぱり、そういう認識なのか…。
そんなことを話しながら、俺たちは校庭を一緒に走った。
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