神谷ナツカの虚空
うっ!
目が覚めると、そこは、閉鎖空間、ではなく、俺の部屋だった。俺はベットから転げ落ちていた。夢でよかった…と心底思う。夢にしてはやけに新鮮さのある夢だし、記憶にこびりついている。それに何故か、体が少し疲れているようです、筋肉がしびれるような感覚がある。もっと、いい夢を見たかったな。例えば長谷川さんとずっと一緒に過ごすとか、そういう感じの。ところで、今歩いてるこの世界は神谷によって既に改変されてしまっている世界なのか、元となんら変わらない世界なのか、どちらなのだろうか?まあいずれにしろ、俺に確かめるすべはないのだが…。とまあ、とこんなことばかりを考えて俺は学校までたどり着いたわけだ。珍しく、神谷が俺より早く教室に来ていた。
「気分はどうだ?」
「最悪よ。昨日、変な夢見て全然眠れなかったのよ。」
「それは俺もだ。」
彼女は、はっ、と我に返るような顔をして俺の方を向いた。だが、一瞬にして元に戻った。やっぱりそうだったんだな。
俺は心の中の門の施錠が取れたようで、すっきりした。
それから放課後、俺は長谷川さん、川上、剱持とも再会した。お互い無事で良かった、と本当に思えた。剱持によると、昨日の数時間だけ俺と神谷だけがこの世から、というか、この時間平面上から消えていたらしい。本当に危険な状態だったという事が染みるように感じられた。
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