神谷ナツカの虚空
蒸し暑い真夏の青く染まった空の下でカキンっという気持ちの良いバットの音が響いていた。
「なあ、もう相手は練習を始めてるぞ?本当にお前の目論見は大丈夫か?」
「そういえば、打者や投手もまだ決めてませんよね。」
そうだ。俺たちはその川上の正に鶴と言わんばかりの発言で気付かされた。まだメンバーしか決まってないということに!
すると、神谷は満足げに言った。
「ふふっ、そこは大丈夫だわ。ピッチャーに関しては全部私、背番号は私が1番、あとのメンバーは…」
そう言いながら神谷はカバンの中をかき回し、一つの薄い紙を取り出した。そして、観覧席の椅子の上に立った。
「これよ!」
神谷が両手で高く掲げたのはなんの変哲もないただのあみだくじだった。
「あみだくじなら全員公平で不満も生まれないでしょう?我ながらいい案を思いついたわ!」
何が公平だ。そもそも神谷の背番号と役が決まってる時点で公平ではないだろう。
「なにか文句ある?」
神谷が念を押すように言った。
「えーっと、一からやり直した方が」
「も、ん、く、あ、る?」
川上、よけいなことは言わなくていいんだぞ!
「じゃ、大丈夫そうね!早速決めていきましょう!」
そういうわけで、俺達の背番号が決まっていった。
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