溺愛総長様のお気に入り。
この姿でつばきに入ったから、南里くんたちには見られたけど……そのことは今言えないし。
ふるふると首を横に振ると、なぜかホッとしたように軽く息を吐く煌くん。
「愛莉がそんなんだと、調子狂うんだけど」
「……」
リップも似合わないのかな?
……あたしは地味でいたままの方がいいんだね。
再び思い知らされる自分の魅力のなさにショックは隠せず。
昔『ブス!』と言われた記憶までもがまざまざとよみがえり、目を瞑った。
何年たっても、誰から見てもあたしはそんなんなんだ……。
だから、こうやっていいようにからかわれて。
「なんか眠気吹っ飛んだ」
いつもはすぐにあたしの膝に寝転ぶ煌くんだけど、不機嫌になってしまい。
「帰るか」
そう言う煌くんに従って、その日はあやめで過ごすことなく、学校を後にした。