溺愛総長様のお気に入り。


「この学校に編入してきたのも、煌がいるからなんだ~」


「……っ!」



動揺して蛇口の先に手が触れた。


そのせいでバシャっと水が飛び散り、ブラウスの袖口が濡れてしまった。



「大丈夫!?」



咄嗟に、自分のハンドタオルを差し出してくれる桜子ちゃん。



「あ、ありがとうっ……」



そうなの?煌くんがいるからこの学校に来たの……?


桜子ちゃんならもっとレベルの高い学校に行けると思っていたけど。


……そうか、そういうことか。



「久々の日本だし、知ってる人がいた方が安心だもんねっ」


「そ、そうだね……」



それだけ?

好き、だからじゃなくて……?


幼なじみがいるという理由で同じ学校に通うなんて、よっぽどのことな気がするもん。


あたしなら、そんな理由で学校は選ばないと思うし。


ほんとに聞きたかった言葉は、結局最後まで口に出せなかった。

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