溺愛総長様のお気に入り。
……なんて濁して、バカみたい。
もうこんなに好きなのに。
煌くんのことで頭がいっぱいなのに。
素直になれない、あまのじゃくなあたし。
「相変わらず愛莉は一筋縄じゃいかないよな。そんなに俺を翻弄して楽しい?」
……ちがうよ、翻弄されてるのはあたしだよ。
つらくて目を伏せれば。
「愛莉が好き。それだけじゃ駄目なのか?」
顎に手を添えらて、あげた瞳に移る煌くんの顔。
──ドキッ。
その目は真剣で、これで嘘をつかれてたら男ギライどころか人間不信になりそう。
何も言えないあたしに、柔らかく笑みをこぼすと。
「卵焼き、くれよ」
そう言って美味しそうに卵焼きを食べる煌くんの本音は、結局分からずじまいだった。