溺愛総長様のお気に入り。


言いにくそうにしている分、あえてニコッと笑いかけた。


まだ何も言ってないのに、桜子ちゃんの名前が出ることを不審に思いながら。



「いや……あの子、愛莉が休みのあいだ、あやめでご飯食べてたみたいだからさ」



やっぱり遠慮がちに告げられたのは、あたしの知らなかったこと。


──ズキン。


素直に胸が痛いと反応する。


そっか、そうだったんだ。桜子ちゃん、あやめに行ってたんだ。


もうやめようって思っても、不器用なあたしはそんなにすぐには適応できないみたい。



「愛莉がいないのをいいことに、あやめに入りびたってさ。煌さんも煌さんだよ。いくら昔からの知り合いだからって、愛莉という子がいながら……」


「いいの、千春ちゃん」



少し強めに声を挟むと、えっ……と声を詰まらせ、あたしを見る千春ちゃん。



「もう……いいんだ」

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