溺愛総長様のお気に入り。
『もう、解放してもらえませんか?』
ついに言われた、と思った。
男ギライの愛莉が、よく俺の言いなりになってそばにいたと思う。
……俺が怖くて逆らえなかっただけなのか?
その間、一度も俺に心が動いたことはなかったのか?
だとしたら、虚しいだろ。
俺は数日愛莉に会えなかっただけでも、こんなにも寂しかったのに。
車の中で愛莉に触れようとした瞬間、その肩が怯えたのがリアルに分かった。
「……っ」
最初の頃こそそうだったが、最近は慣れていてそんなことはなかったから、俺は戸惑った。
やっぱり、真実を知ればそうなっちまうんだ。
──俺と、出会っていた過去を……。
「じゃあ……あたし、行きますね」
落胆した俺は、愛莉を追いかけることすらできなかった。