溺愛総長様のお気に入り。


夜の11時。


たまり場から自宅マンションに帰り、玄関を開けると俺のじゃない靴がそろえられているのを見て、思い出す。


……ああ、アイツがいるんだと。


リビングに入れば、案の定、ソファに寝転がりながらスマホをいじっている奴がいた。



「お帰り。今日も相変わらず遅いんだな」


「……」


「毎晩毎晩、どこほっつき歩いてんの?」


「……」


「無視かよ」



鼻で笑うヤツは俺の兄──鷹柳帝(ミカド)。



「家に帰らねぇの?」


「干渉されたくないからな」



ここは本来の家ではない。


独り暮らしをするために借りた部屋だ。


中学へ上がるときに、日本に帰るかアメリカに残るか選択を迫られた。


帝は迷わず残ることを決めたが、俺は迷って日本へ戻ることに決めた。


俺は実業家の息子として生まれ、いわゆる御曹司と扱われ育った。
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