溺愛総長様のお気に入り。
意地悪く言いながら、目の前にいい香りのするカップが置かれた。
コーヒーに罪はないが、帝が入れたってだけでぶちまけたい衝動に駆られる。
「……誰かさんのおかげで手こずってる」
「誰かさん……?ああ、もしかして俺か?はははっ」
……マジでコイツ、殴りてえ。
その類の勝負では帝に負ける気はしねえ。
小学生時代、愛莉をからかっていたのは俺じゃない。
目の前にいるコイツ、帝なんだ。
桜子から俺が同じ小学校にいたことを聞かされた愛莉は、きっと俺がからかっていた張本人だと思ったのだろう。
だからこそ、俺を避けたんだ。
それがわかっていながら愛莉に本当のことを言えなかったのは、双子としての責任があるから。
あれは俺じゃないと言って、すむ問題じゃない。
俺の片割れが愛莉を傷つけたことには、変わりねえんだから。