溺愛総長様のお気に入り。
「愛莉来てねえか!?」
「来てるわけねえだろ」
嫌味かよ。
って。
「どういうことだ?」
冷静に考えて、顔が強張る。
「下のヤツに呼ばれて。待ってろっつったんだけど、待たせといた場所にいねえんだ」
「一人で帰ったのか?」
「分かんねえ……」
「クソッ……」
俺は勢いよくソファから立ち上がった。
──胸騒ぎがする。
南里がまだ学校に残っていて、愛莉がいないとなると。
「電話しても出ねぇんだ」
そうつぶやく南里の顔はみるみる青くなってく。
「……嘘だろ」
俺も同様だ。
「とにかく捜しに行く。お前のバイク借りるぞ」
「おう」
ハクがバイクのキーを投げてよこす。
片手でそれをキャッチすると、俺はあやめを飛び出した。