溺愛総長様のお気に入り。


「大人しくしてろよ」



耳元で低くささやかれる声。



「……っ」



あたしは、喉の奥が詰まったようになり、一気に声が出なくなる。


一瞬にして背筋が冷たくなった。


両側には知らない男がふたり。そしてちょうど、目の前に車が付けられて。



「乗れよ」


「やっ……!」



そのままあたしは、抵抗もむなしくその車に押し込められた。


なに、なんなの……?


左右には男。運転席も男。助手席には……さっきスマホを貸した男子高生。


困っていたあのときとはがらりと表情を変え、不敵に笑っていた。


……え、どういうこと……?


サッと血の気が引いた。


なにこれ、誘拐?スマホ貸して……って、さっきのは嘘だったの?



「やだっ……!降ろしてっ!」


「うるせえなぁ」



いくら叫んでもわめいても、男たちは素知らぬ顔。

< 373 / 401 >

この作品をシェア

pagetop