溺愛総長様のお気に入り。


「姫を野放しにするなんて、鳳凰の総長も随分脇が甘いんだな」



……煌くんのせいじゃないよ。


あたしが勝手に離れたりしたから。


なのに煌くんが悪く言われて悔しい。



「アイツが守らなかったせいだな。姫ぐらいちゃんと守れっつうの」



自分たちが拉致したくせに、よくもそんなことが言えるものだと思いながらもハッとした。


煌くんが毎日送り迎えしてくれてたのは、もしかしてあたしを一人にしないため……?


解放して……と言ったあとも、南里くんが一緒に帰ってくれたのも、そういうことだったの?


鳳凰の"姫"と認識されているあたしを守るために──。


胸の奥が、ぎゅっと痛んだ……。


そのとき、外でバイクの音が聞こえた。



「あ、もう来た?」



男が外チラッと目をやり、他の男が窓から何かを確認してうなずいた。



「ふっ、随分はえーな」

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