溺愛総長様のお気に入り。


愛しい人の声が聞こえた瞬間、堪えていた涙がぶわっと溢れてきた。


動かないこの体がもどかしい。


すぐ近くに居るのに……近づけないっ。



「愛莉って、あの純情そうな子の名前が」


「てめえっ……!愛莉にはお前の汚い手1本触れさせねえからなあっ!!」


「あー、鳳凰の大事な大事なお姫様だもんな」


「ちげえよ。残念ながら、アイツは鳳凰の姫じゃねえ」



姫じゃない。


うん。知ってる。


でもそれを即座に否定されたことで、チクリと痛む胸。


……煌くんはやっぱり……。



「嘘ついても証拠は上がってんだよ!」



そして、なにかで壁を殴ったのかものすごい音がとどろいた。


ビクンっと肩が上がる。


シン、と静まりかえった壁の向こうに、煌くんの低い声が落ちた。



「誰が鳳凰の姫だ……アイツは…………俺のモンなんだよっ!!!!」

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