ツインテールの魔法
森を隠すなら林の中
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「待ってよ、蒼羽くん!」
過ごしやすい季節は終わり、嫌な暑さを迎えなければならなくなった、ある初夏の昼休み。
都築蒼羽はちょっと……いや、結構バカで有名な桃城夏音から逃げていた。
なぜなら、蒼羽が夏音にイタズラを仕掛けたから。
そんな大層なものではない。
シャーペンの芯を筆箱の中から、全て盗むという、今どき小学生でもやらないようなイタズラだ。
それを高校生にもなってやるなんて、恥ずかしくないのか?と思われていることは、薄々感じている。
しかし、蒼羽は夏音の反応が面白く、ついやってしまう。
「蒼羽くん!シャー芯返して!」
そんな声が蒼羽の背に投げられるが、大人しく言うことを聞くわけがない。
蒼羽は調子に乗って逃げていく。
そのとき、後ろの夏音に集中していたせいで、誰かにぶつかった。
「紘くん!蒼羽くんからノンのシャー芯、取り返して!」
運悪く、ぶつかったのは夏音の弟、紘。
夏音とは正反対で、クールで知的で、近寄り難い。
そこがいいと密かに女子に人気なところが、蒼羽は気に入らない。
紘は蒼羽を見つめる。
負けじと睨み返すが、迫力に負け、蒼羽はズボンのポケットに入れていたピンクベースでレースの柄が描かれたケースを、紘に渡す。
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