ツインテールの魔法
2
夏休みが終わるまで、ミステリー研究部の活動は行われなかった。
夏音に至っては、自室から出ることさえ少なくなっていた。
今日から新学期が始まるため、さすがに引きこもっているわけにもいかず、夏音は制服に着替えて部屋を出た。
「夏音、髪」
「行ってきます」
紘の声が聞こえなかったかのように、夏音は髪を下ろしたまま、家を出た。
あの日以来、夏音は紘と距離を置いていた。
髪を結ばないことで、夏音には笑顔などなかった。
距離を置かれても夏音を放っておくことなどできない紘は、櫛とゴムを鞄に入れ、夏音を追う。
すぐに見つけられたが、夏音に声をかけることはできなかった。
紘は一定の距離を保ち、後ろを歩いた。
学校に近付くにつれて、生徒が増えてくる。
夏音の髪はますます夏音の顔を隠していった。
「おはよ、紘。ノンちゃんは?」
後ろから来た蒼羽に、指で夏音の場所を教える。
しかし、夏音と言えばツインテールというイメージがある蒼羽は、夏音を見つけることが出来ない。
「え、どこ?」
「あの俯いてる奴」
紘に言われ、もう一度夏音を探す。
「え……髪は!?いいのかよ!」
「……いいわけ、ないだろ」