ツインテールの魔法
蒼羽は夏音の顔を覗く。
「ノンちゃん、赤くなってる。もしかして、ときめいちゃった?」
「え?」
蒼羽はその反応に苦笑し、右側の髪を束ねていく。
「そうすると思った」
「……ごめんね」
「完成してないからまだ元気ない感じ?」
蒼羽は冗談混じりに言うが、夏音は答えなかった。
ツインテールが完成しても、蒼羽は髪をいじり続ける。
「蒼羽くん、なにを……」
「んー?ちょっとねー」
蒼羽は胸ポケットからスマホを取り出すと、写真を撮った。
「じゃん」
それは夏音の後頭部で、ゴムの部分に三つ編みが施してあった。
画面を見た夏音は、目を輝かせる。
「すごい!え、どうやったの?紘くんは」
夏音は“あ”の口の形をしたまま、固まった。
「紘はやってくれないだろうね。俺も、姉ちゃんにやらされなかったら、絶対に覚えなかった」
蒼羽は乾いた笑いをし、夏音の隣の席に座る。
「蒼羽くん、お姉ちゃんがいるの?」
「六つ上にねー。今は歌手目指してるらしいけど」
蒼羽はさっきの夏音の髪型の写真を消したついでに、姉の写真を探した。
「あったあった」
夏音は向けられた画面をよく見る。
「これ……リラだ……リラだよね!?」