ツインテールの魔法
画面から顔を上げた夏音の迫力に押されてしまう。
「姉ちゃんの名前、空奈(そらな)なんだけど……」
「でもリラだよ!」
夏音は自分のスマホから画像を探す。
「ほら!」
そこには普段とは違う、微笑む姉の姿があった。
蒼羽は頭が追いつかなかった。
「リラはね、シンガーソングライターで、まだ有名じゃないんだけど、ノン、リラのファンなの!蒼羽くん、リラに会えないかな!?」
さっきまで落ち込んでいた人とは思えないテンションの上がり方で、蒼羽は戸惑いを見せる。
「蒼羽くん、聞いてる!?」
「と、とりあえず落ち着こうか、ノンちゃん……」
「落ち着けないよ!ねえ、蒼羽くん!」
蒼羽がどうしようか迷っていたら、チャイムが鳴った。
担任がドアを開けて入ってくると、夏音は不満そうに前を向いた。
「新学期早々なんだけど、転入生の紹介しておくね」
その言葉とともに、新品の制服に身を包んだ女生徒、藤宮麗が入ってきた。
見惚れる男子、興味なさげな女子。
そして、固まる夏音。
「藤宮麗と申します。よろしくお願い致します」
お嬢様のようなような雰囲気に、クラス全員戸惑う。
ツインテールにしたというのに、夏音は顔を上げない。