ツインテールの魔法

それに気付いた麗は、担任の止める言葉も聞かずに夏音の前に立つ。
麗が前にいるとわかっても、夏音は一ミリも動かない。


「人が話しているときに俯くなんて、失礼極まりないわね」


夏音の顎に手を当てて顔を上げさせると、不敵な笑みを浮かべる。


「よろしく」


夏音は麗の手から逃げ、顔を背ける。
麗はゆっくりと口角を上げる。

その妖艶な微笑みに、蒼羽は目を奪われた。


麗は空いていた、窓際の一番後ろの席に座った。


蒼羽は夏音の様子がおかしいとすぐにわかったが、担任の話が始まり、声を出せなかった。
代わりにルーズリーフの端を裂き、そこに言いたいことを書く。


机に置かれたルーズリーフの切れ端を開く。


『フジミヤとなにかあったの?大丈夫?』


蒼羽のほうを見ると、心配そうな表情を浮かべていた。


口パクで大丈夫と言うが、蒼羽は信じていないようだった。
だが、夏音はそれを見て見ぬふりをした。


◇ ◆ ◇


「ちょっと紘くん!どういうつもりなの!」


放課後になり、夏音は部室で一枚の紙を机に叩きつけていた。

それは文化祭の催し物に関する報告書のコピーだ。


「ノン、ステージはやりたくないって言った!」
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