ツインテールの魔法
麗の泣きそうな声を、紘は黙って聞く。
「私はあの子が嫌い」
麗の目には、次第に涙が浮かんでくる。
「嫌いなのよ……」
紘は麗の涙に気付かぬフリをし、横を通った。
一人になった麗は、声を殺して一筋の涙を流した。
◆ ◇ ◆
一階の西階段の影に、夏音は足を抱えて座っていた。
しかし、今朝結んだはずの髪は解かれている。
「ここはノンちゃんの秘密基地かな?」
「蒼羽、くん……」
顔を上げた夏音の目は、赤く腫れていた。
「あの……髪、ごめん……」
「いいよ、気にしないで」
無理して笑うことすら出来ないくらい、夏音は追い込まれていたのだと思った蒼羽は、そう言うことしか出来なかった。
「でも、その髪のままだと人前に出られないでしょ。ゴム、貸して?」
夏音から二つのゴムを受け取ると、夏音の後ろに膝立ちをする。
「……蒼羽くん、どうしてなにも聞かないの?」
蒼羽は慣れた手つきで髪を二つに分け、耳の後ろで束ねる。
「んー……無理に話させることはないなと思って。そりゃ、ノンちゃんが苦しんでるなら、少しでもそれを軽くしたいよ?でも、無理矢理聞き出すことで辛い思いをさせてしまうなら、俺はノンちゃんが話したくなるときを待つよ」