ツインテールの魔法
紘とは違う優しさに、目頭が熱くなった。
「蒼羽くん、優しいねー……」
涙混じりに聞こえてきた声に、蒼羽はまた自分の無力さを痛感する。
それは無理にでも聞き出して力になりたいけど出来ないという、ただの言い訳にすぎなかったからだ。
もしかしたら紘のしていることが間違っていなくて、自分の考えが間違っているような気がしてくる。
だが、自分が信じられることを疑い始めるとなにも行動ができない。
蒼羽はそんな不安を抱いていることを勘づかれないように、笑顔を作る。
「あれあれ、もしかして惚れちゃった?」
蒼羽は夏音の横に移動し、顔を覗き込む。
すると、夏音は思いっきり泣き出した。
「ごめんね、蒼羽くん……ごめん……」
蒼羽は夏音の頭に手を置いた。
そして流れるように涙を拭った。
「そんなに謝らないでよ。それに、こういうときはありがとうって言ってほしいな」
その言葉で、蒼羽の親指にまた新たな涙が落ちた。
蒼羽がかける言葉を探していると、夏音に抱きつかれた。
唐突なことで、夏音の頬に触れていたはずの手が空気を掴む。
「ありがとう……蒼羽くん」
耳元で聞こえてきた夏音の声で、心臓の音が大きくなった。
これが夏音に気付かれないようにと祈るが、きっとバレていただろう。