ツインテールの魔法
「それはそうなんだが……」
「それに、どうして三年って、怖い声で言ったの?」
どこまでも夏音の疑問は尽きないし、敬語は使わなかった。
紘は注意をするのを諦め、話を聞いていくことにした。
一方、蒼羽はとうの昔に飽きていて、背もたれに背中を預け、手遊びをしていた。
「そこに深い意味はない」
「……そっか」
夏音は呟いた。
そして腕を組み、なにかを閃くまで考えた。
「犯人のにぼしは付いてるの?」
「目星だ」
黙って聞いているつもりだったが、さすがに訂正しないわけにはいかなかった。
夏音は、そう、目星、と小さく続ける。
そして日野はじっと隣に座る蒼羽を見つめた。
視線に気付き、蒼羽は手遊びを止める。
「え、俺?」
「そうなの?蒼羽くん」
夏音はどこか悲しげな表情を見せた。
紘に至っては、軽蔑とも取れる目をしている。
「いや、え?待って!なんで俺が!」
蒼羽は椅子を倒す勢いで立ち上がり、大声を出す。
「お前はいつも、イタズラを」
「そうだけど!でも、高校生になってからはノンちゃんにしか……」
「日頃の行いだな」
いい気味だと言わんばかりの言い方に、蒼羽は苛立ちを覚える。
今日はよく紘に腹立つ。
なんて余計なことを考える余裕はなかった。