ツインテールの魔法
3
翌日から文化祭の準備期間で、生徒全員の楽しそうな声がいろいろなところから聞こえてくる。
夏音のクラスでは和風喫茶の準備が進められているが、教室には夏音の姿はなかった。
「都築くん」
上は着物、下はスカートと和風な衣装に身を包んだ麗は、教室の装飾物を作る蒼羽を呼んだ。
「藤宮さん、超似合ってる!」
「なになに、都築なんかに見せに来た感じ!?」
一緒に作業をしていた男子が茶化すが、蒼羽はそれを聞いていない。
「……なに?」
普段の蒼羽からは想像出来ないくらい、低い声だった。
麗がしようとしていることを知らない周りの人は、蒼羽を怒らせてしまったと思った。
「からかって悪かったよ」
「そんな怒んなよ」
「え?あ、いや、怒ってないから気にしないで」
蒼羽はこれ以上ここでは話せないと思い、教室を出る。
麗も後を追う。
「……それで?俺になにか?」
「桃城夏音はどちらに?」
「教えてもらえると思って聞いてる?」
すると、麗は鼻で笑った。
それがまた蒼羽を苛立たせる。
「なにがおかしいんだよ」
「本当にあの子が大事なのね。そんなに敵対視しないでくださる?衣装係の子があの子の衣装合わせをしたいと探していたのよ」