ツインテールの魔法
夏音はそっぽを向いてそう零した。
苛立ちが、ピークに達した。
「ああ、そうかよ!勝手にしろ!」
紘は半分しか開けられていなかったドアを大きな音を立てて開けきり、出ていってしまった。
「紘くんの……バカ……」
「そう……だね、言い方が悪いね。でも、今のは夏音が悪い」
それは幼い子を諭すような言い方ではなく、突き放すような声色だった。
蒼羽の言うことに納得出来ない夏音は、蒼羽のほうを見る。
「だって、今のは私のことは心配しないでって言ってるようなもんだよ。それはさ、寂しいじゃん。俺らって夏音のなんなの?ってなる」
「ノン、そんなつもりじゃ……」
「うん、わかってる。でもね、そう聞こえたんだ。だから紘は怒った」
夏音は理解出来たのか、ゆっくりと涙を落とした。
「どうしたらよかったんだろう……本当は紘くんと喧嘩なんてしたくない……こんなに悩みたくない……だって、ノンは……ノンは、悩むことなんて知らない、楽しいことが好き子……じゃなきゃ、ダメだから……」
蒼羽は抱きしめたくなる衝動を抑えた。
「……ノンちゃん、そんなに自分を作らなきゃいけない?ていうか、どうして作ってるの?」
俯く夏音の顔をそっと上げた。
「作らなきゃ……ノン、消えちゃう……」
夏音の目が潤んでいく。
蒼羽は夏音の言っている意味がわからなかった。