ツインテールの魔法
「俺じゃない!だいたい、盗む理由がないし!」
「お前の成績は褒められたものじゃない」
日野の反論に、蒼羽の勢いは消えた。
「それはそうだけど……」
なにを言っても信じてもらえない状況だとわかり、蒼羽は全身の力が抜けたように、椅子に座った。
「俺じゃない……」
「しつこいな。素直に認めたらどうだ」
夏音に犯人を探してくれと言ったくせに、日野は蒼羽を犯人だと決めつけている。
それが面白くないのか、夏音の顔から笑顔が消えた。
「ねえ先生。蒼羽くんだっていう、証拠は?」
「は……?」
「ないのに人を疑うのはよくないよ。それも、先生が生徒を。もし違ったらどうするの?謝って終わり?蒼羽くんの立場は?これでもし、蒼羽くんが学校に来ないって言ったら?ねえ先生、どうするつもりなの?」
日野は言葉を詰まらせた。
普段とは少し違う夏音に、蒼羽も動揺した。
たしかに嫌な気持ちにはなったが、夏音が言うところまで追い詰められたわけではない。
だから気にしなくていいと、夏音に言いたかった。
だが夏音の纏う空気に、柄にもなく体がすくみ、声も出なかった。
「……悪かった。桃城、犯人探し頼む」
日野はそう言って、逃げていった。
「さ、紘くん!今日の問題のヒント、教えて!」