ツインテールの魔法

「俺じゃない!だいたい、盗む理由がないし!」
「お前の成績は褒められたものじゃない」


日野の反論に、蒼羽の勢いは消えた。


「それはそうだけど……」


なにを言っても信じてもらえない状況だとわかり、蒼羽は全身の力が抜けたように、椅子に座った。


「俺じゃない……」
「しつこいな。素直に認めたらどうだ」


夏音に犯人を探してくれと言ったくせに、日野は蒼羽を犯人だと決めつけている。


それが面白くないのか、夏音の顔から笑顔が消えた。


「ねえ先生。蒼羽くんだっていう、証拠は?」
「は……?」
「ないのに人を疑うのはよくないよ。それも、先生が生徒を。もし違ったらどうするの?謝って終わり?蒼羽くんの立場は?これでもし、蒼羽くんが学校に来ないって言ったら?ねえ先生、どうするつもりなの?」


日野は言葉を詰まらせた。


普段とは少し違う夏音に、蒼羽も動揺した。
たしかに嫌な気持ちにはなったが、夏音が言うところまで追い詰められたわけではない。


だから気にしなくていいと、夏音に言いたかった。
だが夏音の纏う空気に、柄にもなく体がすくみ、声も出なかった。


「……悪かった。桃城、犯人探し頼む」


日野はそう言って、逃げていった。


「さ、紘くん!今日の問題のヒント、教えて!」
< 12 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop