ツインテールの魔法
そして夏音はさっきぶつかった彼を追いかける。
「待って!」
なかなか彼に追いつけず、半分諦めかけたとき、紘の姿が見えた。
「紘くん!その子、捕まえて!」
急なことで理解はできなかったが、紘は夏音に言われるがままに彼を捕まえた。
彼は逃げようとするが、紘がしっかりと腕を掴んでいる。
「離せ!離せよ!」
追いついた夏音は、彼と目を合わせる。
次第に諦めたのか、彼は大人しくなった。
「どうして部室を荒らしたの?ノンの衣装切ったのも、あなただよね?」
夏音はどこか悲しそうだった。
しかし、それを聞いた途端、彼は逆上した。
「お前が!僕の小説をミステリーじゃないとか適当なこと言うから!」
「作者さんだったの!?ごめんね、すぐに教えてあげたかったんだけど、ちょっといろいろあって……」
夏音は言葉を濁す。
だが、彼の怒りは収まらない。
「そんなのどうでもいい!僕が書いたのはミステリーなんだ!なのにどうして!」
「作者さんがそうだと言えばそうなるけど……じゃあ、あの話の謎ってなに?」
「は……?」
彼は自分で書いた小説のストーリーを思い出す。
主人公は頼りない男の探偵で、助手はとても頼りになる女性。
女性が襲われそうになるところを男が助け、恋仲になるという話だ。