ツインテールの魔法
「ミステリーは解決すべき謎がある。でも、あなたの作品にはそれがなかった」
彼は返す言葉がなくなり、俯くしかなかった。
それなのに、夏音は彼をさらに追い込んでいく。
「ノンが見た限り、あれは日常だよ。探偵と助手の日常……というか、恋愛?謎解きなんてしてないよね。だから、ジャンルで言うなら恋愛かな」
夏音は言い切った。
「僕はミステリーを書いたんだ……」
だが、それを認めたくなくて、彼はそう呟いた。
「だったら、事件を起こさなきゃ。せっかく探偵を主人公にしてるんだもん。襲われるってところを、事件解決したときに犯人が怒って女の子を人質にしちゃって、それを助け」
「勝手に作るなよ!」
夏音の提案を遮るように、叫んだ。
自分の話を膨らまされたことよりも、夏音の言うことが正しく、それを思いつかなかった自分に腹が立った。
だけど、夏音は彼がそう思って怒ったとは知らず、自分が悪いことをしたと思った。
「ごめん……」
謝る夏音を見て、彼は自分がしたこと、言ったことを思い返す。
完全な八つ当たりでしかないのに、夏音に謝らせてしまったことに後悔が押し寄せてくる。
すぐにでも逃げたくて、紘の手を払う。