ツインテールの魔法

「わーお……」


予想外の真相に、蒼羽は言葉が出なかった。
二人は立派な濡れ衣だったわけだ。


「謝罪は?」
「もちろんあったわ。ただ、私たちの噂は学校中に広まっていたから、誤解されたまま時が過ぎていった」


同情しか出来なかったが、それを言葉にしてしまうのもまた違うような気がした。


「じゃあ、ノンちゃんに言ったのは完全な八つ当たり?」
「……そうね。言ってすぐ後悔したし、謝ろうとも思ったけど逃げられて、機会を失った。……だから、私は夏音に嫌われるべき存在だと思った」


それを聞いて、あの日の麗の言葉を思い出す。


夏音が不幸になればいい。


これは、本心ではなかったということになる。


「藤宮さん、ノンちゃんのこと好き?」


すると、麗は微笑んだ。


「夏音を悲しませたら、息の根を止める……かもしれないわね」
「過激ー」
「ふふ、冗談よ。本気なら、今私はここにいないわ」


麗は笑えない冗談を言うと、夏音のもとに行った。


麗の言葉とあの日のみんなの対応から、夏音がどれだけ愛されているのかがよくわかった。
それは、みんな平等だと接するがゆえのことだろう。


「いつか俺だけが特別って言ってくれたらいいのに……なんてね」


その独り言は誰に届くこともなく、文化祭は始まった。
< 133 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop