ツインテールの魔法
「わーお……」
予想外の真相に、蒼羽は言葉が出なかった。
二人は立派な濡れ衣だったわけだ。
「謝罪は?」
「もちろんあったわ。ただ、私たちの噂は学校中に広まっていたから、誤解されたまま時が過ぎていった」
同情しか出来なかったが、それを言葉にしてしまうのもまた違うような気がした。
「じゃあ、ノンちゃんに言ったのは完全な八つ当たり?」
「……そうね。言ってすぐ後悔したし、謝ろうとも思ったけど逃げられて、機会を失った。……だから、私は夏音に嫌われるべき存在だと思った」
それを聞いて、あの日の麗の言葉を思い出す。
夏音が不幸になればいい。
これは、本心ではなかったということになる。
「藤宮さん、ノンちゃんのこと好き?」
すると、麗は微笑んだ。
「夏音を悲しませたら、息の根を止める……かもしれないわね」
「過激ー」
「ふふ、冗談よ。本気なら、今私はここにいないわ」
麗は笑えない冗談を言うと、夏音のもとに行った。
麗の言葉とあの日のみんなの対応から、夏音がどれだけ愛されているのかがよくわかった。
それは、みんな平等だと接するがゆえのことだろう。
「いつか俺だけが特別って言ってくれたらいいのに……なんてね」
その独り言は誰に届くこともなく、文化祭は始まった。