ツインテールの魔法
蒼羽はそう呟きながら、紘に電話をかけた。
本来ならば夏音にかけるが、夏音のスマホは電話やメールが出来ないらしい。
「……なんだ」
電話越しだと紘の低い声がさらに低く聞こえ、怒られているような気になってしまう。
だが、紘に怯えている場合ではない。
「ノンちゃんいる?」
「いるよー!」
聞いてすぐ夏音の声が聞こえたことから、紘がスピーカーにしているのだとわかった。
「ノンちゃん、今なにしてる?」
「えっとねー、紘くんに髪を結んでもらいながら紘くんの作った問題解いてるー」
声が弾んでいる。
蒼羽は二人の関係に妬いたが、空奈の言葉がそれをどうでもいいことにしてしまう。
「……リラに会いませんか」
「会う!会います!」
即答だった。
それに、あの日のようなテンションの上がり方で、蒼羽は少し安心した。
これで空奈に怒られない。
「今日なんだけど……」
「すぐ行く!どこに行けばいい!?」
「じゃあ……」
蒼羽は最寄り駅を待ち合わせ場所とした。
クラスメートたちには用ができたと説明し、カラオケ店を出た。
◆ ◇ ◆
待ち合わせ場所に来た夏音の髪型は、酷く崩れていた。
ハーフアップに挑戦していたのか、その痕跡が見られる。