ツインテールの魔法
恐ろしく曖昧なリクエストに、蒼羽は戸惑う。
しかし、すぐに夏音の髪に触れた。
あと数分で到着するというときに、蒼羽は夏音から手を離した。
夏音は自分の頭に手を当てる。
「……ツインテールじゃないですか」
不満そうに頬を膨らませた。
「いつも通りでいいんじゃないかってことで、ツインテールだよ」
「それなら俺にだって出来る」
紘も不服そうだ。
「ツインテールと団子、おさげ……それ以上にレパートリーを増やしてから嫉妬しろよ」
蒼羽の勝ち誇ったような表情に苛立ち、紘は蒼羽のすねを蹴った。
声にならない痛みを覚える。
「……っにすんだよ」
「ムカついた」
続けて文句を言おうとすると、それに被せるように到着のアナウンスが流れた。
蒼羽は舌打ちをし、席を立つ。
「蒼羽くんと紘くん……喧嘩?」
続けて立ち上がった夏音が、そう尋ねた。
「……ノンちゃんの天然が素なのか演技なのか」
「さあ、どっちでしょう?」
夏音はいたずらっぽく微笑む。
「まだ、俺には見極められないな」
蒼羽は夏音の頭に軽く手を置くと、一番に電車から降りた。
「もうすぐリラに会えるね!」
「はいはい」
蒼羽と夏音の距離が近くなっていることに不満しかない紘は、冷たくあしらった。