ツインテールの魔法

駅から徒歩三分のところにある空奈のマンションに着いたが、ある部屋の前で蒼羽の動きが止まった。


「蒼羽くん?」
「……俺、帰」
「いらっしゃーい」


踵を返して帰ろうとした瞬間、目の前のドアが開いた。
蒼羽は振り向けなくなる。


「はわわ!リラだよ、紘くん!リラがいる!」
「あなたが私のファン?」


興奮のあまり、夏音は首が取れる勢いで頷いた。


「そう。……ところで蒼羽。なにしてるのかな」
「いえなにも!お久しぶりですね、お姉様!」


振り返った蒼羽は一息で言った。


「くそ……なんでわかったんだ……」
「現在地情報ー」


空奈は語尾に音符でも付けたかのような言い草だ。


「さ、入って入って」


空奈に案内され、三人は中に入った。
そして夏音は食卓テーブルに着き、蒼羽と紘はソファに座った。


「そうだ、名前聞いてなかったね」


お茶を淹れるために台所に立つ空奈から、そんな質問が飛んだ。


「桃城夏音です!あっちは紘くん!」
「双子?」
「みたいなものです!」


夏音のテンションは上がったままで、その様が微笑ましくなる。


「ところで……よく、私のこと知ってたね。それほど有名じゃないと思うんだけど……」
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