ツインテールの魔法
それぞれの前にコップを置いていき、夏音の前に座る。
「あずちゃんに教えてもらいました!」
「あず?」
自分で用意したお茶を喉に通しながら聞く。
「島田小豆だ」
答えたのは紘だった。
予想外のところからの返答に、空奈は少し驚くが、納得したような表情を見せる。
「なんだ、小豆先輩か」
「知り合いです?」
「高校の部活が一緒だったの。そっかそっか、先輩にね」
切なそうに呟く空奈が、夏音は気に入らなかった。
「たしかにあずちゃんに教えてもらったけど、ノンはリラの歌、好きだよ。リラの歌声も、歌詞も好き」
夏音から敬語が消えたが、誰もそんなことは気にしない。
「……ありがとう」
照れているのか、空奈は目を逸らした。
「でも、どうしてリラなの?本名、空奈なんだよね?」
その質問に、空奈は顔を上げた。
「ネットで知られてると思ってた……」
「ノン、ネットとか使わない」
「使わない!?今どきそんな子が……」
夏音は自分のスマホを空奈の前に置いた。
「電話もメールも出来ない。……契約、切ったから。ネットは見ないようにしてる」
夏音の話を聞きながら、夏音のスマホを操作する。
たしかにどちらも使えない。
「どうして?」