ツインテールの魔法
「世の中にはたくさんの人がいて、好きな物、嫌いな物もそれぞれあって。……ネットでは嫌いな物を嫌いだと包み隠さず言って、それをさらに否定する……そんなやり取りを見たくない。それに、嘘にまみれてるから」
その理由に、納得する以外なかった。
「ノン、好きな物は否定されたくない」
「悪評があるのは決まってるのね」
夏音にスマホを返す。
「あ、あれ!?ノンが言いたいの、そこじゃない!」
夏音が慌てて否定すると、空奈は吹き出した。
それは蒼羽がいたずらが成功したときに見せる笑顔に似ていた。
「わかってる。話の流れ的にそれくらいわかるよ」
すると、夏音は頬を膨らませた。
「蒼羽くん並の意地悪さだ……」
「俺より悪いっての」
お茶を飲み干してコップをさげようと立った蒼羽が、キッチンに行く途中に呟いた。
「ごーめん、蒼羽。お姉ちゃん、ちょーっと耳悪くなったみたい。今、なんて言った?」
「なにも!言ってません!」
蒼羽の返しに、夏音と紘は笑いを堪える。
「それで、リラにした理由だっけ」
空奈はそばに置いていた紙とペンを取る。
そこにカタカナで自分の名前を書く。
「……リラナ?」
逆から見ても、そうにしか見えなかった。