ツインテールの魔法
夏音が不安そうな顔をした瞬間、紘は蒼羽の頭を殴った。
「なんで殴られた!?」
「お前がとんでもないバカだからだ」
「意味わかんない!」
叫ぶ蒼羽を置いていくように、紘は歩くスピードを上げた。
◆ ◇ ◆
会場に着くと、出演者の控え室に入った。
「蒼羽ー、髪やってー」
椅子に座る空奈に言われ、蒼羽はぶつぶつと文句を言いながらクシを手にした。
その様子を、夏音と紘は廊下から見ている。
しかし、夏音から不安の色が出ていた。
「知らないところがあるのは当たり前なのに……なんか……」
「知らなければ知ればいい。だろ?」
「……教えてくれるの?」
紘を見上げるが、紘は答えなかった。
夏音は頬を膨らませる。
「嘘つき」
紘は悩んだ。
本当のことを言ってもいいのか、考えても答えが出てこない。
「俺は……夏音を誰にも渡したく、ない……」
だから、夏音の様子を伺うように言った。
夏音から笑顔が消える。
「……うん」
「夏音が恋愛をしたくないことわかってるから、隠すようなことになった。……ごめん」