ツインテールの魔法
「ううん。ノンのほうこそ、ごめん」
二人はそれ以上その話題に触れなかった。
無言で空奈たちが出てくるのを待つ。
「紅葉……?」
次第に賑やかになっていたはずなのに、その声がやけにはっきりと聞こえた。
声の主は夏音の手を掴んだ。
「紅葉!」
中年男性に乱暴に腕を掴まれた夏音は怯えている。
紘は彼から夏音を離し、後ろに隠した。
「……どちら様ですか」
「お前も紅葉の男か……?」
なにを言っているのか、わからなかった。
紘は“モミジ”という人を知らない。
「家族を捨てて俺のものになるって言ったじゃないか、紅葉!」
「失礼ですが!この子は夏音です。紅葉ではありません」
紘に遮られ、彼は紘の後ろに隠れる夏音の顔を見た。
「紅葉……だろ……?」
夏音は首を横に振る。
「紅葉、は……ノンの、ママの名前……ママは……殺されてる」
「嘘、だ……嘘だ!」
男は夏音に今にも襲い掛かりそうな形相だった。
だが、その瞬間に警備員に捕まった。
よく見ると、その後ろに空奈と息を整えている蒼羽がいる。
どうやら空奈が蒼羽に呼びに行かせたらしい。
「夏音ちゃん、大丈夫だった?なんか勘違いされてたみたいだけど」